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2010年4 月22日 (木)

糖尿病の薬が難病治療に!?

糖尿病の薬が難病治療に!?

 今朝は,M1トミーがNature Med.3月号から、今後の臨床試験の動向が楽しみな研究成果を紹介。本分野でも研究している嚢胞性線維症(CF)という難病に対して、糖尿病治療薬として用いられているロシグリタゾンが効果を示したという話。ロシグリタゾンはPPAR gammaのアゴニスト。CFの原因遺伝子であるCFTRが欠損するとPPAR gammaの内因性リガンドの15-keto-PGE2が減少しており,PPAR gammaの下流の遺伝子発現が低下し,CFマウスでは、腸管の粘液が過剰になるが、ロシグリタゾンが有効であるという。現在,Phase 1の臨床試験中とのことですが、今回の知見は、組織中の15-keto-PGE2が低下している患者を第一の試験対象者にすることにより、その有効性を精度高く判定できることを示唆しているように思う。いわゆる、臨床試験のクオリティを高めることに貢献する可能性はある。本論文は、マウスにおいてCFTR欠損の表現型が現れる腸管上皮に焦点をあてているが,ヒトにおいて表現型が現れる肺上皮において、PPAR gammaの重要性をどこまで証明できるのか今後の展開が楽しみである。一方で、チアゾリン系糖尿病治療薬のうち、なぜロシグリタゾンを使ったのかを考えてみたらどうだろうか。ロシグリタゾンはピオグリタゾンは心不全リスクを高めるため,特に高齢者(?)の糖尿病治療に用いることに反対する意見もある(リスク)。現在,チアゾリン系糖尿病治療薬の開発企業は苦しい状況におかれている中(薬害オンブズパーソン )、寿命が平均30歳であり、薬が全くない難病である嚢胞性線維症に対する治療薬として活路を見出そうとしているようにも思える。

 ついでに、チアゾリン系糖尿病治療薬の臨床における有用性に関する問題から,現在の糖尿病治療薬の臨床における有効性評価は、単に血糖値に関わるマーカーが改善する作用は評価に値せず、心血管リスクなどの臨床上のイベントを減少させたかどうかが重要とされているとのこと。患者側からしたら当たり前の話であったのだが。

 

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