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2012年5 月30日 (水)

腹部大動脈瘤と喫煙の関係

腹部大動脈瘤と喫煙の関係

喫煙により発症リスクが7.6倍という腹部大動脈瘤の発症メカニズムが明らかになった。Nature Med.よりKoyama君が紹介。ニコチンが動脈平滑筋細胞でROSを産生し、ROSがAMPKα2を活性化し、転写因子AP-2αを介してメタロプロテアーゼMMP2の転写を活性化し、産生されたMMP2が動脈血管壁の弾性組織中のエラスチンを分解し、大動脈瘤の形成を促すという話。今回、APOEノックアウトマウス(動脈硬化マウス)にニコチン(1.5mg/kg/day, 6 week) を吸入させると腹部大動脈瘤ができることを明らかにしたことも大きな成果。昔、腹部大動脈瘤が破裂して亡くなった方がいた。吐血して、一気に亡くなった。ニコチンの投与量は、1日タバコ3箱分。また、禁煙のためにニコチン補充療法を行うが、動脈硬化症の人は、注意して行わなければならないか、禁忌になるのだろうか。今回のニコチンモデルでの大動脈瘤発生率は20%というデータであったが、アンジオテンシンAngII吸入モデルでは100%起こっている。アンジオテンシンをターゲットにした医薬品の有用性も再度示した論文でもある。AMPKの活性化薬としてメトホルミンを用いて、ニコチンと同様な経路を介して、MMP2の転写を活性化するというデータも示している。抗糖尿病薬であるメトホルミンを動脈硬化が起こっている患者に使うことはまずいのか、それとも動脈硬化の進展が抑制されるから問題ないのか。

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