2018年5 月17日 (木)
冬眠メカニズムから移植臓器保護技術へ冬眠メカニズムから移植臓器保護技術へ
Cell 5月号から。Junのプレゼン。冬眠中は、活動期のエネルギー消費の13%まで低下しているという。冬眠動物がどのように極度の低体温に適応し、細胞を生存させているかは不明であった。今回の論文では、冬眠動物のリスからiPS細胞を作成し、神経細胞へと分化した細胞を用いて、非冬眠動物と比較検討した。1)低温処理により、リス由来細胞では、微小管の断片化が起こらず、ヒト由来細胞では起こること、2)RNAseqなどで発現比較すると、熱ショックタンパク質やプロテアーゼなどのタンパク質品質管理に関わる遺伝子やミトコンドリア機能に関連する遺伝子の発現が変化していたこと、3)リス由来細胞では、低温刺激でミトコンドリア膜の脱分極、ヒト由来細胞では、ミトコンドリア膜の過分極が起こること、そして、4)リス由来細胞よりヒト由来細胞では、ROS過剰産生が起こることを明らかになった。 ヒト由来細胞に、ミトコンドリア脱共役剤とプロテアーゼ阻害薬を併用処置すると、寒冷耐性になったという。この技術は、臓器保存液にミトコンドリア脱共役剤とプロテアーゼ阻害薬を添加することで、移植臓器の保存にも使えることをマウスの腎臓を用いて証明している。冬眠できるマウスやヒトが遺伝子改変で可能になるのかや、クマや他の冬眠動物でも同じメカニズムかなど今後の研究展開が楽しみである。この論文は面白い。