Mol.Cellの11月号から。Teramonのプレゼン。TGF-βはがん抑制に関わるという報告がある一方、がんの後期では悪性化にも関わるという。このガンの悪性化に関与するメカニズムは未解明なところが多い。本論文では、TGF-βの下流分子のひとつであるSMAD3の活性制御にさらなるリン酸化修飾が重要であることを明らかにしている。SMAD3のリン酸化体と結合するスプライシング因子PCBP1が見いだされている。PCBP1は選択的スプライシング(特定のエキソンを引き抜くスプライシング)に関与し、EGFなどとTGF-βによりダブルでリン酸化されたSMADが核内に移行し、相互作用することにより、がん幹細胞マーカーでもあるCD44がスプライシングアイソフォームにし、ガンを悪化させることを明らかにしている。網羅的な解析により、TGF-βは、384カ所、287遺伝子のスプラシングを誘導させ、これらの287遺伝子はがんの悪性化に関わるものが多かったという。がん細胞においては、EGFあるいはオンコジーンにより活性化されるリン酸化酵素(Akt、MAPKなど)は、SMAD3(TGF-βとは別のリン酸化部位)とPCBP1をリン酸化し、今回のTGF-βによるSMAD3のさらなるリン酸化が、がんの悪性化に関与しているという。