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2016年5 月18日 (水)

ため息が出るメカニズム

ため息が出るメカニズム

Nature 2月号から。ジョンのプレゼン。ヒトは1時間に数回、無意識にため息をしているという古い論文がある。5分に1回という話もあるという。また、ため息の生理学的な意義としては、肺胞でのガス交換、肺胞の機能維持に重要であるということも古くから報告されている。意識的または、感情による呼吸の調節は、大脳皮質が呼吸中枢へと働きかけることにより起こる。中枢性の化学受容体(CO2/H+を感知する)がRTN/pFRG (The retrotrapezoid nucleus/parafacial respiratory group)という延髄の特定の部分に存在しており、自発呼吸において重要であることは知られていた。延髄におけるプレベッツィガー複合体も吸気において重要であり呼吸のリズムを発生させており、RTN/pFRGと機能的・解剖学的な関連があるということも知られていた。この論文では、その二つの部位を化学的に連絡している分子を同定している。ひとつはNeuromedin B、もうひとつはGastrin-releasing peptideであるという。この両方が関与しており、それぞれの受容体に対するアンタゴニストを処置すると低酸素誘発のため息をほぼ完全に抑制できたという。ため息が出るような心因性の刺激があるとNMB、GRPニューロンが刺激されるのであろう。熊薬の歴史でもある咳の薬理学的研究から、呼吸中枢の研究の歴史を知っているだけに興味深い話であった。

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