Nature Med. 7月号から。Normanのプレゼン。特発性肺高血圧症の遺伝要因として、BMP受容体2の変異が2000年に報告されていた。肺血管の内皮細胞におけるBMPR2が重要であることが様々な研究によって示唆されていた。そこで、治療薬の開発のために、肺血管内非細胞のBMPR2に作用するリガンドを特定する試みが行なわれ、BMP-9が同定された。本論文では、BMP-9の低用量処置(0.1-1 ng/ml)により、肺血管内皮細胞のSmadを活性化し、抗アポトーシス作用、内皮細胞のダメージを抑制すること、種々の肺高血圧症モデル(3種類の異なるメカによるモデル)に対して顕著な効果(BMP-9 (75 ng/day)の腹腔内投与)を示すことを明らかにした。興味あるところは、BMP-9処置により、BMPR2の遺伝子発現も増加させるという。副作用として考えられる骨化作用は認められなかったという。病態が形成された後でも有効であったことから、遺伝子組み換えBMP-9あるいはBMPR2-ALK-1 complexに作用するchemical compoundが治療薬として期待できるかもしれない。現在、肺高血圧症に対して用いられているプロスタサイクリン、エンドセリン受容隊阻害薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬よりも、BMP-9がどの程度有用か?あるいは、プロスタサイクリンやエンドセリンなどの分子がBMP-9の下流にあり、最も上流のキー分子がBMP-9-BMPR2であったというような知見があるとさらにこの論文の有用性が強調されるだろう。
2015年9 月 9日 (水)
2015年9 月 8日 (火)
アルツハイマー病と好中球
Nature Med.8月号から。アルツハイマー病態において、好中球はAβ1-42によるLFA-1の活性化を介して、脳全体へと広がり、脳内炎症およびその後のアルツハイマー病態進展に影響すること、さらに、この病態変化は、抗体療法による好中球機能阻害により抑制されることを明らかにした論文。認知機能改善、Aβ蓄積減少、Tauリン酸化抑制、神経活動の正常化、ミクログリアの過剰活性化抑制などの作用が、アルツハイマーモデルマウスにLFA-1抗体、Ly6G, Gr-1抗体を投与することで認められている。アルツハイマー病患者の大脳皮質や海馬において、好中球の浸潤も認められるというデータもある。この論文のマウスの実験では、病態初期の4ヶ月令から週2回4週間投与している。実際に臨床を考えると、症状が進展してからは、効果はどうなのか。高齢者における好中球の劇的な機能低下は感染症を起こしやすくする可能性がある。本研究では、好中球の機能を98%も抑制した状況で効果を認めている。この動物実験の環境をSPFでやったから、これらの結果が出たのであり、無菌ではない通常環境で実験を行なっても同様な結果が出るだろうか。臨床では、肺炎等の感染症を引き起こしやすくならないのであろうか。感染症で亡くなるか、アルツハイマー病で亡くなるということにならないだろうか。アルツハイマー病に対するNSAIDsの有効性はまだ混沌としているとのことである。この論文のポイントはAβが高親和性LFA-1好中球を誘導することであり、接着分子をターゲットにした抗体療法がアルツハイマー病に有用である可能性を示したことであるらしい。Okita君のナイスプレゼンでした。
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