2015年9 月 8日 (火)
アルツハイマー病と好中球アルツハイマー病と好中球
Nature Med.8月号から。アルツハイマー病態において、好中球はAβ1-42によるLFA-1の活性化を介して、脳全体へと広がり、脳内炎症およびその後のアルツハイマー病態進展に影響すること、さらに、この病態変化は、抗体療法による好中球機能阻害により抑制されることを明らかにした論文。認知機能改善、Aβ蓄積減少、Tauリン酸化抑制、神経活動の正常化、ミクログリアの過剰活性化抑制などの作用が、アルツハイマーモデルマウスにLFA-1抗体、Ly6G, Gr-1抗体を投与することで認められている。アルツハイマー病患者の大脳皮質や海馬において、好中球の浸潤も認められるというデータもある。この論文のマウスの実験では、病態初期の4ヶ月令から週2回4週間投与している。実際に臨床を考えると、症状が進展してからは、効果はどうなのか。高齢者における好中球の劇的な機能低下は感染症を起こしやすくする可能性がある。本研究では、好中球の機能を98%も抑制した状況で効果を認めている。この動物実験の環境をSPFでやったから、これらの結果が出たのであり、無菌ではない通常環境で実験を行なっても同様な結果が出るだろうか。臨床では、肺炎等の感染症を引き起こしやすくならないのであろうか。感染症で亡くなるか、アルツハイマー病で亡くなるということにならないだろうか。アルツハイマー病に対するNSAIDsの有効性はまだ混沌としているとのことである。この論文のポイントはAβが高親和性LFA-1好中球を誘導することであり、接着分子をターゲットにした抗体療法がアルツハイマー病に有用である可能性を示したことであるらしい。Okita君のナイスプレゼンでした。