Nature Med. 7月号から。Normanのプレゼン。特発性肺高血圧症の遺伝要因として、BMP受容体2の変異が2000年に報告されていた。肺血管の内皮細胞におけるBMPR2が重要であることが様々な研究によって示唆されていた。そこで、治療薬の開発のために、肺血管内非細胞のBMPR2に作用するリガンドを特定する試みが行なわれ、BMP-9が同定された。本論文では、BMP-9の低用量処置(0.1-1 ng/ml)により、肺血管内皮細胞のSmadを活性化し、抗アポトーシス作用、内皮細胞のダメージを抑制すること、種々の肺高血圧症モデル(3種類の異なるメカによるモデル)に対して顕著な効果(BMP-9 (75 ng/day)の腹腔内投与)を示すことを明らかにした。興味あるところは、BMP-9処置により、BMPR2の遺伝子発現も増加させるという。副作用として考えられる骨化作用は認められなかったという。病態が形成された後でも有効であったことから、遺伝子組み換えBMP-9あるいはBMPR2-ALK-1 complexに作用するchemical compoundが治療薬として期待できるかもしれない。現在、肺高血圧症に対して用いられているプロスタサイクリン、エンドセリン受容隊阻害薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬よりも、BMP-9がどの程度有用か?あるいは、プロスタサイクリンやエンドセリンなどの分子がBMP-9の下流にあり、最も上流のキー分子がBMP-9-BMPR2であったというような知見があるとさらにこの論文の有用性が強調されるだろう。