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2014年10 月22日 (水)

「忘却は記憶するために必要」であるメカ

「忘却は記憶するために必要」であるメカ

Cellの3月号から。B3のジョンの初ゼミ。記憶の消失は常に変化する環境のために必要である。記憶とは、神経細胞内のアクチン分子を介したシナプスの容量を増やすのがメカニズムであることが知られている。一方、忘却のメカニズムは?本研究において、Musashi-1(変異体で体表の毛が2本になるということから名付けられた分子)に注目し、線虫を用いて種々検討している。その結果、Musashi-1の機能損失変異体は記憶のアップに関係していること、Musashi-1が機能しているニューロンの存在、Musashi-1とArp2/3 mRNAが相互作用するとリボソームによる翻訳が抑制され、Arp2/3の量が減ってアクチン重合ならびにシナプス容量を減らすことにより忘却が起こるという。この論文のタイトルは「Forgetting is regulated via Musashi-mediated translational control of the Arp2/3 complex」である。これをほ乳類にどう外挿できるか?記憶のnegative regulationが忘却であるという。この記憶と忘却の最上流の分子はグルタミン酸受容体であり、両方のメカニズムが同時に動いているため、年齢とともにMusashi-1の発現が増えるか、あるいは対立的分子が減ってくるかで、忘却系が促進されるかもしれない。記憶の容量は限られているから、忘却の経路も同時にパラレルで動かないといけない。あまりたいしたことないことを忘れることは常に変化する環境に順応するために重要であり、鬱病やその他の精神的な疾患の発症や治療に関わる話だろう。最近、私がジョギングするメリットとしていつも実感していることがある。私は元来、変化に乏しいジョギングはきついばかりで好きではなかった。しかし、比較的、楽に走れる3kmまでは、その日のあったことや嫌なことを思い出しながら走っているが、5kmを過ぎると体力的にきつくなり、走ることだけしか考えられなくなる。10km過ぎた頃には、脳が完全にリセットされ、帰宅後、シャワーを浴びるとすべてが流され、精神的にリフレッシュされ、新たな一歩を進むことが出来る。本論文は難しい内容ではあったが、よく読みこなしている。ジョン頑張れ。

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