2012年10 月 2日 (火)
新たな癌制御機構新たな癌制御機構
Cell, 7月号の論文からMachyが紹介。E3-ligase complexの構成成分であるSkp2という癌原遺伝子があり、多くのガン抑制遺伝子の分解を担っている。Skp2はIP3-Akt pathwayによりリン酸化され、細胞質局在を示すことはわかっていたが、マウスのSkp2のリン酸化部位は保存されていないことからSkp2の新たな制御機構が存在することが考えられていた。この論文では、Skp2がp300によりアセチル化され、細胞質に移行させることによって、Skp2の核内分解を防ぐこと、アセチル化されたSkp2はミトコンドリア内のSirt3により脱アセチル化され、核に移行し、Cdh1による分解を受けること、細胞質内に局在するアセチル化Skp2はcasein kinase 1 依存的に、E-cadherinを分解し、細胞遊走能を高め、癌を悪性化していることなどが明らかにされた。また、ヒト乳癌患者由来の組織において、Skp2とE-cadherinの発現量に逆相関があることも示されていた。リン酸化部位とアセチル化部位が近傍にあり、マウス以外のほ乳類では、互いに競合する可能性はあるが、リン酸化を抑制する薬をやってもアセチル化が起こると癌が悪性化することが予想される。癌は単純には抑制できないことを示しているようでもある。この分子群を創薬ターゲットにするのは難しいのだろうか。マウスの自然発症がんモデルを用いた薬効評価は誤った結果が得られる可能性も示唆しているのだろうか。