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2012年10 月 3日 (水)

がん放射線療法時の副作用をラパマイシンが抑制する!?

がん放射線療法時の副作用をラパマイシンが抑制する!?

頭頸部癌の治療において放射線治療が一般的であるが、副作用として粘膜炎症が起こることが問題であるという。1965年、イースター島の土壌最近から発見されたマクロライド系薬剤である、ラパマイシンは放射線療法との併用により抗ガン作用の相乗効果が期待できるという報告があったが、今回の論文は、頭頸部癌細胞株において、抗ガン作用の相乗効果は認められなかったが、放射線による正常上皮細胞の老化を抑制することが明らかになった。放射線は正常細胞において、p53の活性化によるアポトーシス、ROSの発生を介したp16の活性化による細胞老化(SASPの増加による慢性炎症)、さらには、mTORの活性化によるMnSODのタンパク質発現量の低下(その結果、ROSがさらに増える)などにより、粘膜炎症が引き起こされるという。ラパマイシンは、mTORを抑制することにより、MnSOD量が増加し、ROS量が激減し、上記の正常細胞で見られる慢性炎症が抑制されるという。免疫能の低下という可能性が気になるが、放射線が当てやすい頭頸部癌だから骨髄への影響を考えなくても良いのかもしれない。アン先生からの指摘で、がん幹細胞の保護になってしまう可能性もあるのではという点も考慮すべきかも。今回のラパマイシンの投与量は低く、実際の臨床を考えた場合、放射線の照射時に影響する部位の粘膜に局所投与することで、さまざまな副作用を問題視すること無く、粘膜炎症を抑制できるかもしれない。今後、実際の現場でどう活用されるかが楽しみな研究成果である。Cellの姉妹紙のCell Stem Cellの9月号からの論文。Kameのプレゼン。昨日のMachyのプレゼンといい、学部4年生だが、しっかりとした成長を感じる。将来が楽しみである。
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