2011年7 月22日 (金)
免疫細胞の活性化と収束免疫細胞の活性化と収束
Immunityの6月号から。M2 Matsu-shinの13回目のプレゼン。
T細胞は、抗原を感知すると活性化して、増殖したり、サイトカインなどを放出する。この活性化の際に、抗原提示細胞とT細胞の接着面には、お互いの細胞表面にある受容体や細胞内のシグナル伝達分子が同心円状に配置された「免疫シナプス」を形成するという。本研究グループは、以前に、T細胞受容体と下流のシグナル伝達分子からなる小さな集合体「マイクロクラスター」を発見している。この論文では、このマイクロクラスターが、微小管を足場とする分子モーターの機能を持つダイニンによって微小管を伝って運搬され、免疫シナプスの形成につながること、この移動によって免疫シナプスに集まったT細胞受容体が分解され、T細胞の活性化が収束することを明らかにしている。今までダイニンは、細胞分裂、神経細胞の軸索伸長や機能、繊毛運動に必要な動力を生み出す分子モーターとして知られていた。今回の発見は、免疫応答の基本的なメカニズムである抗原認識とT細胞活性化に関与すること、さらに、ダイニンは、細胞内の分子や液胞を運搬するのではなく、「細胞膜にある分子複合体をそのまま免疫シナプスの中心に向かって細胞表面に沿ってけん引する」ということ明らかにしている。今まで、関与が言われていたF-アクチンはマイクロクラスター形成のイニシエーションに関与し、ダイニンはその後の移動と収束に関与するという一連の流れが明確になった。この研究で用いられている実験法も面白い。この雑誌の同号にB細胞でも同様な現象が起こることが発表されている。細胞膜にある分子複合体を移動させるという、微小管の役割は免疫系以外の細胞でも観察されうるのだろうか興味がある。