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2011年6 月24日 (金)

喫煙により肺気腫病態が起こるメカ

喫煙により肺気腫病態が起こるメカ

Journal of Clinical Investigation 6月号から。D1のShigo.

 

肺気腫による肺胞の破壊。肺気腫の95%が喫煙が原因。喫煙が肺胞細胞の過剰なアポトーシスを起こすことが知られている。肺内皮細胞特異的にアポトーシスを誘導すると肺気腫様の症状を示す。endothelial monocyte-activating protein2(EMAP2)に注目した研究。このタンパク質の前駆体は元々はRNA結合ドメインとして機能しているが、炎症時のタンパク質分解酵素により、分解されると このEMAP2が産生されるという。肺特異的にEMAP2過剰発現するマウスにおいてアポトーシスにより肺気腫になるという。タバコを吸うとマクロファージや肺内皮細胞などのタンパク質分解酵素やcaspase-3を活性化し、アポトーシスが起こるとEMAP2の前駆体の発現を上昇させ、タバコによる炎症性タンパク分解酵素活性上昇により、さらに、前駆体を分解させ、EMAP2の産生を促すという。その結果、 caspase-3を活性化し、アポトーシスが誘導され、さらに肺気腫病態が悪化していくという。重篤な肺気腫病態になっていくメカニズムをクリアに示している。実際に喫煙者の肺洗浄液中のEMAP2は増えている。マウスの実験でEMAP2の中和抗体を投与すると肺気腫病態が改善したという。具体的には、喫煙から4ヶ月かかる肺気腫病態が、途中の3ヶ月目から1ヶ月間、EMAP2の中和抗体50μg/100μlを週3回噴霧吸入するときれいに病態進行が抑制されたという。

 

一方で、EMAP2は非小細胞性肺ガン患者の血液に多く存在することからガン診断マーカーになるのではという報告や、膵臓がんに対して、抗がん薬とEMAP2を併用投与は有用であるという基礎的な報告などがあり、EMAP2の今後の展開について注目してみたい.

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