2011年6 月23日 (木)
ワクチン開発のための新たな基礎的知見ワクチン開発のための新たな基礎的知見
Nature Medicine 4月号。D2のKen-chan。
Alum(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムなど)は樹状細胞の膜リン脂質(スフィンゴミエリン)と結合し、シグナル分子の相互作用が促進され、アジュバント活性を示すことがわかった。6月3日の朝セミナーの尿酸と喘息との関係の論文と関連づけると面白いかもしれない。Alumがどうして注目されるのだろうか。この論文の最後に安全で効果的なワクチン開発において重要な情報を与えるだろうと書いてある。尿酸結晶でも同様なメカニズムで樹状細胞を活性化しうるが、Alumと違うのは、貪食されるかどうかだという。実験方法として、原子間力顕微鏡を使って、相互作用を評価していることは面白い。
いつもブログを見て、有用な情報を送ってくれている、OBのFukuda氏から貴重なご意見が送られてきましたので掲載します.
「アジュバントは世界のワクチン開発で最も注目されている技術の一つです。
現在米国、欧州で承認されているアジュバントはAlumだけと言っても過言ではありません。
最近になってようやくGSK (AS03, AS04)やNovartis (MF59)のアジュバントが承認されましたが、自己免疫疾患惹起の懸念を払拭するのが難しく承認までにかなりの年月を費やしています。
しかし、2009年にパンデミックインフルエンザ発生した際、明らかになったように世界のワクチン抗原の生産量には限りがあります。
アジュバントは使用する抗原量を大幅に減らすことが出来ると期待され、更に免疫を長年にわたって維持することが期待されています。
最近発売されたアジュバント含有HPVワクチンであるCervarixは少なくとも20年は免疫が持続すると推定されています。
また、タンパク(ペプチド)抗原だけではうまく免疫がつかない感染症でも、アジュバントを用いると免役できる可能性を秘めています。
経験的にAlumはTh2タイプの免疫応答を高める傾向が強く(特に動物で)、新しいワクチンの開発では常にアナフィラキシーのリスクを伴います。
最近の研究ではTLRのように機作のハッキリしたもの以外にもリポソームやナノ粒子を用いたアジュバント研究でIgEの産生を抑制したりCTL活性を効率的に誘導したりすることが可能となってきており、その有用性に期待が掛かっています。」