2009年6 月12日 (金)
がん血管新生阻害療法と最近の報告がん血管新生阻害療法と最近の報告
1971年、J.Folkmanは、New England Journal of Medicineに「Tumor angiogenesis: therapeutic implications.」というタイトルで血管新生を抑制すれば,固形がんの増殖を抑えることができることを提唱した.その後,血管新生阻害薬が開発され、2004年 2月、米国FDAで「Bevacizumab」という初の血管新生阻害薬が認可された。これは、癌細胞が分泌する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対するヒト型モノクローナル抗体であり、臨床試験においては数ヶ月の生存期間延長を認められているが、その後,様々な血管新生阻害療法の有用性については色々と議論が分かれはじめている。今朝,Fukudaくんが紹介した論文は、血管新生阻害薬はがんに対して効きが悪いどころか逆に転移を促してしまう可能性を分子レベルで示した驚愕に値するもの。今日の、Nature Cell Biol.2008年3月号のYangらの、「がん転移において重要な転写因子であるTwistは低酸素時に活性化されるHIF-1alphaによって誘導され、がん転移を促進する」という報告、2009年3月、Cancer Cell、Ribesらの、「血管新生阻害療法は局所浸潤と遠隔転移を促し,腫瘍の悪性化をさらに促進する」という報告,さらに、同号、Ebosらの、「がん血管新生阻害薬の投与期間、がんステージによっては逆に悪性化を促進する」という報告があり、J.Folkmanの提唱した仮説を再考する時期かもしれないと思った.本日、メインに紹介したNature Cell Biol.のFig.8c(臨床におけるデータ)は、低酸素状態のままの方が,転移しないことを示しているように思う.Kerbelが2008年5月号、New England Journal of Medicineに「Tumor angiogenesis」という総説を書いているが,他の抗がん薬などとの併用を含め,様々な視点で議論しているので、血管新生阻害療法に興味ある方は、上記の論文とともに読んだ方が良いように思った.
Fukudaくん(4年)は落ち着いて、うまくプレゼンしている。ドクターの学生たちもたじたじに近いのでは?