Nature Med.3月号の論文から骨粗鬆症の治療薬についてMatsu-Shingo (M1)君がわかりやすく紹介してくれた。腸管のセロトニン合成(tryptophan hydroxylase-1)を薬物(LP533401)で抑制することにより骨形成を促進できるという。腸管セロトニンは骨吸収には影響を与えず骨形成を強力に抑制するという報告はあった (Cell, 2008). LPは2008年のJPETに紹介されていた。LPは血液脳関門を通過しないため脳内のセロトニンには影響せず、また、腸管の運動にも影響しないという。現在認可されている、骨形成促進する唯一の薬 (PTH) は、連日の皮下注射であり、かつ副作用の懸念から短期の使用しか認められていないという。LPは長期使用できる経口投与可能な骨形成促進薬として注目を集めるだろう。一般にマウスやラットでは、ヒトとは異なり、セロトニンが主に関わっている生理現象が多いことなどを考慮すると、LPのヒトでの有効性がどうか不安は多少あるが、将来、臨床試験で有効性が確認されれば、多くの高齢者の朗報になり、大型医薬品(ブロックバスター)化するだろう。骨粗鬆症治療薬の臨床試験は、その有効性の確認のために長期を要することになるだろうが、大変楽しみである。
創薬・生命薬科学科の第一期生であるM1組は、朝ゼミも学部3年から数えて7回目であり、かなり力をつけてきた。成長を感じる。同級生でお互いを刺激し合う関係は良いものだ。過去の卒業生を振り返っても、同級生間の切磋琢磨が成長に一番大きな効果があることに疑う余地はない。最近の朝ゼミには多くの学部2年生が参加している。彼らの将来も楽しみである。