2013年6 月16日 (日)
シスチントランスポーターxCTとがん幹細胞シスチントランスポーターxCTとがん幹細胞
特別講演1 佐谷先生(慶応大学)
現在、臨床における有用性が大変期待されている研究である。もしかしたら、ガンが撲滅される時代がくるのかもしれない。
がん幹細胞は腫瘍組織構築の根源になる細胞であり、治療に対する抵抗性が高いことから、癌の再発、転移などの主因になると考えられている。
発表された一連の知見は、CD44のバリアントアイソフォーム (CD44v)ががんで多く発現していることがきっかけという。CD44vはトランスポーターであるxCTの細胞膜上での発現を安定化し、抗酸化能がアップすることによりがん幹細胞が生き残る方向に向かい、治療に対して抵抗性を示すという。また、CD44v8-10ができるための因子であるESRP1を同定し、CD44のスライシングバリアントが慢性炎症によるヒストンmodificationで誘導されるという。sulfasalazineがxCT inhibitor がん幹細胞を選択的に叩くことを明らかにし、臨床試験が行われているという。
さらに、乳癌、大腸癌などの固形癌においては、CD44陽性の癌細胞は癌幹細胞様の性質を持ち、CD44のバリアントアイソフォーム(CD44v)の発現は、遠隔転移と相関していることを明らかにしている。佐谷先生らは、癌幹細胞の主要な表面マーカーの一つであるCD44を介した酸化ストレス回避機構が、乳癌の肺への転移を促進することを明らかにし、CD44を高発現する転移性乳癌細胞を標的にした治療法の確立に繋がる大きな可能性を秘めていると考えられています。
とにかく素晴らしい研究である。