Cell 2月号から。B3のMegumyのプレゼン。JAMAの8月号に、「Association of Gluten Intake During the First 5 Years of Life With Incidence of Celiac Disease Autoimmunity and Celiac Disease Among Children at Increased Risk.」という論文発表があった。1型糖尿病やセリアック病関連HLA抗原遺伝子型を有する小児6605例を対象に、グルテン摂取量にセリアック病自己免疫やセリアック病との関連があるか多国籍出生コホート前向き観察研究で検討している(TEDDY研究)。この結果から、5歳までにグルテンを高摂取するとセリアック病のリスクが上昇するという。セリアック病の患者はグルテンフリー食を生涯に渡って摂取しないといけないというが、そのメカニズムは何かということを明らかにしたのが、今回、紹介されたCellの論文である。セリアック病では、グルテンを摂取し続けると腸内で慢性炎症が起こり、最終的には絨毛の萎縮により吸収不良を起こし、関連の症状が起こってくる。故に、腸において何が起こっているか。腸管上皮における免疫監視には、組織常在性の腸管上皮細胞間リンパ球(IELs)が関与している。IELsの大部分がαβT細胞とγδT細胞で構成され、今回の論文によると、セリアック病では、γδT細胞が関わっており、γδT細胞の中でも組織型のVδ1+細胞が関与し、かつ炎症性サイトカイン産生が高い性質を持つものに変貌しているという。その性質の変化は、TCR遺伝子再構成によるものであり、その変化は、腸管上皮細胞に発現するブチロフィリン様分子(BTNL3/8)と結合できなくなるγδT細胞Vδ1+となり、正常な免疫応答を維持することができなくなるという。すなわち、γδT細胞Vδ1+の性質の不可逆的な変化が、セリアック病がグルテンフリー食で予防するしか手がない理由かもしれない。。
2019年10 月 2日 (水)
2019年10 月 1日 (火)
2019年7 月24日 (水)
パーキンソン病治療と腸内細菌との関係
Science 6月号から。L-dopaはパーキンソン病の代表的な薬である。脳へ到達するL-dopaは、投与量の5%以下であり、その有効性に影響するだけでなく、末梢でdopamineに代謝され、副作用発現上昇や有効性低下に繋がるという。これは、体内に存在する芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(Aromatic L-amino acid decarboxylase;AADC)が、L-dopaからdopamineへと代謝する酵素が、脳だけでなく、末梢にも存在していたことが原因であり、この酵素を末梢で阻害するカルビドパが併用薬として用いられていた。本研究は、経口投与されたL-dopaは、まず、腸内で、腸内細菌のEnterococcus faecalisに由来するチロシン脱炭酸酵素(TyrDC)により、dopamineに代謝されると共に、Eggerthella lentaに由来するモリブデン補因子依存性ドパミン脱水素酵素(Dadh)により、dopamineがチラミンに分解され、不活性化されていることを明らかにした。故に、腸内のTyrDCも抑制することで、末梢におけるdopamineを増やすことができるという。さらに、本研究では、TyrDCの阻害薬として、AFMTを合成し、in vivoでの効果を見るとL-dopaの有用性を向上させることができるという。さらに、Dadhについては、Eggerthella lentaによっては、1アミノ酸変異があり、それにより、活性があるものと無いものに分類されるという。これが、副作用発現の個人差に関係しているかもしれないという。この研究成果を臨床の現場に届けるために、臨床試験プロトコールをどう工夫していくか大変興味がある。L-dopaでの副作用発現患者を対象に、腸内細菌叢をチェックした後、AFMTの投与量を固定し、L-dopaの有効性と忍容性を考慮しながら投与量を上げていくことになるのだろうか。。少ない患者数で対応できそうなので、開発コストはあまりかからないかも。。