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2020年4 月12日 (日)

薬学部の今 ーコロナ対策と「不安」と「差別、偏見」の感染症対策としてー

薬学部の今 ーコロナ対策と「不安」と「差別、偏見」の感染症対策としてー

できるだけ早期に(4月2日〜8日)、万全な感染症対策をしながら、学生達に対するガイダンスを実施した。その際に、学部長として、全ての学生に、以下のメッセージを伝えた。

1) できるだけ早期にガイダンスを実施した理由は、無症候あるいは症状が軽い傾向にある、若い大学生達に対して、出来るだけ早めに行動変容を促すためであり、これは大学としての大きな社会的責任(授業開始などが延びている期間におけるバイト、カラオケ、コンパや帰省、自分は大丈夫だからという無責任な行動に関する早期の注意喚起)。自分自身だけでなく、同居家族において風邪様症状が出ている場合においても、必ず自宅待機すること(その後の対応は、大学本部のHPを参照)。

2) 感染症対策としての3つの「密」を避けるとは何かを、広い講義室、窓の常時開放、席指定により、隣人との距離を開けつつ濃厚接触者の特定できることを、学生達が実感し、かつ、感染防止のために、入室時の手洗いの徹底、マスク着用(飛沫を防ぐだけでなく、持病などを有する感染弱者の「不安」感染症対策に有用。マスクを着けていない人を感染弱者が見た時に、恐怖を覚える)が如何に重要かを、学生達に、できるだけ早期に理解してもらう。なぜ、殺ウイルスに、70−80%エタノールや石鹸なのかも、薬学的な観点から作用メカニズムを学んでもらう。

3) 遠隔講義が実施可能なWEB環境を早期に自宅に準備してもらう(今のうちに、新入生も、3つの「密」が重なることを避けつつ、大学のWeb環境へのアクセスや導入ガイダンスを実施)。大学側からメールで来る、WEB環境に関する様々なアンケート調査に対して、すぐに回答すること。

4) テレビやSNSを通して、繰り返し流れるコロナ情報から回避することによる、心の「不安」感染症の予防策や、「差別、偏見」の感染症対策の重要性を認識してもらう。また、不幸にも感染してしまった者を「差別、偏見」で責めてはいけない。誰でも必ず感染するタイプのウイルスであり、いつ自分が逆の立場になるかわからない。陽性者はクラスター潰しの重要な協力者(情報提供者)になるとポジティブに考えてあげるようにしよう。特に、前線で頑張っている医療従事者の感染者に対する「差別、偏見」の感染症を防ごう。医療崩壊により、ウイルス感染症による重症者の治療だけなく、他の疾患患者の治療、手術もできなくなる。

 

(追加して、)

  今できる大学の社会的貢献は、学生の行動変容を促しつつ学生を守るだけでなく、社会を守り、医療体制を守ることである。遠隔授業は、対面式の代替として技術的な意味だけでなく、対面式が可能になった際にも「不安」がまだ強い学生や講義者のための対策でもある。だから、対面式が始まっても遠隔授業体制は、しばらくは、あるいは、ずっと必要である。これからは、学生も教員も遠隔授業に慣れていかなければならない。今、熊薬は、One Teamとなり、多くの先生方からなる、様々な対策チームがミッションを共有しながら、今後、どのような状況になろうとも対応できる教育研究体制を構築するために頑張っている。4年前の熊本地震の時と同様な誇らしい行動である。バイトができなくなった、経済的にも苦しい学生達にも、キャンパス整備のバイト(3つの「密」が避けれる)を用意した。このような時だからこそ、大学は本領を発揮し、様々なメッセージを社会に届けるべきである。

 

  公衆衛生の領域は、薬学を学んだ者だからこそ、強みを発揮すべきと思う。新型コロナウイルスに対する創薬やワクチン開発だけでなく、薬が無くても公衆衛生対策だけでも多くの人の命を救うことができること、すなわち、実際に医療に携わっていなくてもできることが沢山あることを理解し、できることから実行に移していくべきである。行動次第で、薬が無くても多くの人を救える。

 

  ここしばらくは、創薬・生命薬科学科の4年生は大学院入試勉強のため、薬学科4年生はCBTの勉強、薬学科5年生は実務実習関連の勉強、薬学科6年生は国家試験勉強の時間ができたと思って、夜はしっかり勉学に励んで欲しい。学部1〜3年生は、学内サイトにアップした「コロナ関連の課題」を薬学生としての自覚を持ってしっかりと取り組んで欲しい。また、大学院生は、自らの研究においては、自己の判断を優先し、研究の実施を判断すること。もし、実施しないといけない実験については、万全の感染症対策をとって欲しい。さらに、今後、大学閉鎖になった場合のリスク管理の意識も持っておいて欲しい(緊急事態宣言が出た地域の大学の研究室の状況を把握しておく必要がある)。

 

  このウイルスは、ステルス性があることから、長期の付き合いになってしまう。このウイルス感染は、新たな社会の必要性を人類に求めていると思う。このウイルス感染は、地球に住む全ての人達の生き方、暮らし方の見直しを人類に求めていると思う。この機会に、大学生には、多角的な視点で、この感染症が社会にもたらす影響と今後の社会のあり方を考えてほしい。アフリカでは、感染拡大に対する脆弱な医療体制がニュースになっているが、実際は、新型コロナ感染拡大防止策により、隣国や先進国との流通が途絶えることにより、食料、電気、ガソリンの不足などの社会基盤の崩壊が起こり、もっと悲惨な状況になりつつある国もある。アフリカに住む、我々の多くの仲間達も、近い将来、平穏な暮らしが送れるようになることを祈りたい。

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