2016年5 月30日 (月)
新たなホルモンであるアスプロシン:新たなインスリン抵抗性改善薬の開発へ新たなホルモンであるアスプロシン:新たなインスリン抵抗性改善薬の開発へ
Cell の4月号から。Misatoちゃんのプレゼン。新生児早老症様症候群 (NPS)という希少難病がある。胎児期と生後を通じて予後不良であり、症状として、発達遅滞、早老症様顔貌、皮下脂肪組織の減少(部分性リポジストロフィー:脂肪異栄養症)が出現するという。NPSの原因遺伝子は、Fibrillin-1 (FBN1)でありC末端に変異がある。前駆体であるProfibrillin-1はfurinによりC末端の140アミノ酸が切断され、成熟FBN1が産生される。切断された140アミノ酸は機能未知であったが、この論文では、この断片がホルモンとして機能し、アスプロシンとして命名された。NPS患者では、血中アスプロシンは減少していること、アスプロシンは摂食により減少し、絶食により増加すること、アスプロシンは主に白色脂肪細胞から産生されること、アスプロシン投与により、肝細胞由来の血中グルコースが増加し、インスリンも増加することなどが明らかになった。さらに、インスリン抵抗性を呈する2型糖尿病におけるアスプロシンの役割を調べたところ、インスリン抵抗性を呈する2型糖尿病マウスおよびヒトにおいてアスプロシンが増加しており、アスプロシンの抗体投与により、高インスリンが改善し、アスプロシンの阻害がインスリン抵抗性改善薬になる可能性があるという。アスプロシンの受容体は未同定であるが、cAMP-A kinase経路を介していることから、Gsとリンクしたオーファン7回膜貫通型受容体であり、その阻害薬の開発が楽しみである。