2016年1 月15日 (金)
腸内細菌をターゲットとする動脈硬化治療薬発見ー食事が大事腸内細菌をターゲットとする動脈硬化治療薬発見ー食事が大事
Cellの12月号から。Harukyanのプレゼン。動脈硬化による心血管リスクには、コレステロールや飽和脂肪酸では説明できないことから、腸内細菌に注目し、種々検討した結果、食事中のホスファチジルコリンが腸内細菌を介して関与していることが示された。すなわち、高コリン食により、腸内細菌叢でコリンがtrimethylamine (TMA)に変換され、吸収後、肝臓においてフラビンモノオキシゲナーゼ3 (FMO3) によりtrimethylamine N-oxide (TMAO)に代謝され、TMOの胆汁生成抑制作用によりコレステロールの逆輸送を抑制し、動脈硬化を促進し心血管リスクを上げるという。L-カルニチンもコリンと類似構造であり、これも最終的にTMAOを増加させるという。そこで、腸内細菌叢におけるコリンあるいはカルニチンからTMAに変換する酵素を抑制するコリン類似体3,3-dimethyl-1-butanol (DMB)をスクリーニングにより発見し、この化合物を飲水投与で、動脈硬化を劇的に抑制することが出来たというのがこの論文のポイント。血液型があるように、腸内細菌も個人個人でタイプがあり、エンテロタイプ1型、2型、3型と分類されているという。このなかでもエンテロタイプ2型では、カルニチン食により、血中TMAOが高く、エンテロタイプ1型は低いという。エンテロタイプ2型は歯周病菌の1種であるプレボテラが優位であるという。歯周病と生活習慣病との関連もあり、大変面白い。また、DMB(下図が構造式)はいくつかのイタリア料理などで使われるバルサミコ酢、赤ワイン、そして、単純に冷温下で圧縮して製造したオリーブオイルに多く含まれるという。菜食が良いのは明確であるが、肉を我慢できるかどうかがポイント。