2013年5 月21日 (火)
アテローム性動脈硬化症に新たなメカ:その2アテローム性動脈硬化症に新たなメカ:その2
昨年の2月にChosa君がマクロファージとアテローム性動脈硬化症との関連の論文を紹介したが,今回は、Nature Med. 5月号から、Yukiちゃんが高コレステロール時に血小板の産生が増え、アテローム性の血栓に関与してくるメカニズムを明らかにした論文を紹介。コレステロールの輸送に関わるトランスポーターは、マクロファージに発現している、ABCA1, ABCG1と骨髄に発現している、ABCG4が存在していることは知られていたが,ABCG4がなぜ骨髄に発現しているのかという疑問に対する答えは全くなかった。
血小板の産生に関わるシグナル系として、TPO(トロンボポエチン)-c-MPL signaling(cMPLはTPOの受容体)が関わっていることは知られていた。巨核球において、ABCG4が欠損すると、高コレステロール時に膜内のコレステロールが蓄積し、その結果、Lyn kinaseが抑制される。すると、c-CBL(c-MPLをユビキチン化し分解を促す)がリン酸化され、c-MPLが分解され、TPOの作用が低下し、血小板の産生は抑制されたという。ゆえに、ABCG4は、細胞内のコレステロールを細胞外のHDLに受け渡し、Lyn Kinaseの活性を維持し、高コレステロール時に血小板が増えすぎないように(アテローム性の血管閉塞を抑制)していることがわかった。本論文には、合成HDL投与が血小板増加症の新規治療薬(動物モデルと末梢血管障害患者)として有用というデータがあるが(ABCG4ノックアウトマウスでは効果は見られない)、慢性疾患には現実的ではない治療法であるという。LYN kinaseの活性化薬が有望かもということも述べている。