2012年11 月22日 (木)
iPS細胞の効率的な作製法iPS細胞の効率的な作製法
Cellの10月号に極めて面白いiPS関連論文が報告された。自然免疫に関わるTLR3を刺激すれば、ウイルスベクターを使わずとも、修飾タンパク質導入あるいはmmRNAでも効率的なiPS細胞作製が可能であり、ガン化の副作用も考慮しなくてよいという内容。きっかけはレトロウイルスベクターを使わずに、修飾したタンパク質を導入しても作製効率は低かったが、コントロールベクターをタンパク質と一緒に入れると効率が上がったという。いわゆるウイルス感染が重要であること。山中因子を修飾タンパク質として導入する時に、TLR3アゴニストであるPoly ICを入れるだけで良いという。作用メカとしては、TLR3下流(TRIF-dependent)にNFkBとIRF3があり、内因性の山中因子の発現をエピジェネティックに上昇させるという。どちらかの経路だけの活性化だけでは不十分であるという。本論文では、線維芽細胞からiPSを誘導しているが、他の細胞を用いても同様であろうか。用いた細胞のTLR3の発現量により効率が変わる可能性はあるだろう。自然免疫分子TLRの研究のメッカである日本からこの論文が発表されてこなかったのは残念である。この知見は真実であれば大きな意味を持つ。また、c-Mycなしの3因子でも同様なレベルの効果が期待できればもっと面白い。最近は、低分子化合物だでもiPS誘導も可能であるという話もある。それにもPoly ICの作用が期待できるかもしれない。あるいは、エピジェネティックに影響する薬剤を組み合わせてタイミングよく投与していけば、低分子化合物だけでもiPSが作製できる可能性を強く示唆する。この論文によってTransflammationという新しい単語が生まれた。Transformation through inflammationの略という。面白い。面白い。プレゼンしたMachyに感謝。