2009年7 月23日 (木)
天文ショーと未来のがん治療天文ショーと未来のがん治療
昨日は、天文ショー.TVでも特集が組まれ、太陽の恵みを実感させられた1日でした.熊本でも部分日蝕が雲の合間から観察でき,最大時には、昼間にも関わらず、夕方の暗さになり、蝉の鳴き声がすうっと消え、薬草園のマメ科の植物の葉が閉じていました。部分日蝕でさえこうですので、一生に一度で良いから皆既日蝕を体感してみたい気になりました.日蝕(日食)はsolar eclipseと英語で言いますが,eclipseは「太陽や月の食」の意味の他に、「(名声などの)失墜、没落」という意味があります。おととい,solar eclipseにあわせるように、麻生首相が衆議院を解散し、何となく自民党も失墜(eclipse)したのではと感じさせられました。46年前の日本での皆既日蝕、すなわち昭和38年はどうだったかと調べてみると、偶然にも、この年も日蝕後の秋に、衆議院の解散を行なっていました。ただし、この解散は、今年の解散とは異なり,東京オリンピックの前年であることから政治の安定を図るとともに、所得倍増政策について国民への信を問うべく、自民党にとってポジティブな解散・総選挙であったようです。この年に初当選した自民党員には、中川一郎、渡辺美智雄、伊東正義、鯨岡兵輔、橋本龍太郎、小渕恵三など、その後の日本を左右してきた方々がいました。また、この年には、ダラスでケネディーが暗殺され、日本では,力道山が刺殺されました。ヒンズー教では日蝕は悪い現象とされ、日蝕中はガンジス川での沐浴で体を洗い清め、日蝕が終わると皆で歓喜の声を上げるようです.日蝕後には、世の中も洗い清められていることを期待したいですね.
前置きが長くなりましたが,昨日の朝のセミナーでは、takashiが、cell cycleに関わる分子を抑制するmicroRNAを用いた、肝臓がんの新たな治療法(miRNA replacement therapy)を提起するCELL6月号の論文を紹介しました.この特定のmiRNAは、正常組織に比べ、がん組織でかなり低下していることから、本法は、それを正常レベルに補うという方法なので、正常組織への副作用がない画期的な治療法になるとのことです。in vivoのデータも説得力があり、miRNAの遺伝子導入法が一般の臨床に普及する近未来には、本研究は極めて重要な貢献をしたことになると思います。興味深いことに,このmiRNAが存在するゲノム上のlocusは、様々ながんで欠失していることから、多くのがんの悪性化を左右する重要なmiRNAであるかもしれません。ゆえに、肝臓がんだけでなく、多くのがんにも適用できる可能性も秘めていますね。