Nature Med. 4月号から。 Takada君のプレゼン。イマチニブに対する抵抗性獲得と再発が問題。これまで、様々な刺激が抵抗性獲得に寄与していることが明らかになっていた。本論文では、それらの刺激で共通して変化する分子として、c-Fos(AP1ファミリーであり、細胞増殖、生存、アポトーシス、発ガンに関与)とDusp1(MAPK抑制を介して、炎症•免疫制御、薬物抵抗性に関与)を見いだした。この両因子を同時にノックアウトしたマウスを用いたり、阻害薬を併用した時に、白血病細胞の増殖が抑制されたり、白血病病態マウスの生存率を劇的に高めることを見いだした。要旨の最後には、「増殖因子によってc-FOSとDUSP1の発現が誘導されると、さまざまなタイプの白血病でTKI療法に対する内因性耐性が生じるように、c-FOSとDUSP1の発現レベルがTKI療法の有効性の閾値を決定していることを示しており、c-FOSとDUSP1はキナーゼ活性化が関わるがんにおける「アキレスのかかと」的なものとなる可能性がある。」イマチニブを含めて三剤併用療法の有用性、その他の血液疾患やがん疾患への適用拡大などが期待されるという。副作用が比較的少ないとのこと。今後の臨床試験が楽しみである。
2017年5 月12日 (金)
2017年5 月11日 (木)
線虫の寿命延長と一価不飽和脂肪酸
Nature 4月号から。Maruちゃんのプレゼン。ゲノムのヒストン修飾が様々な遺伝子の発現に影響を与え、加齢や老化現象に関与していることは知られていた。本論文では、H3K4me3 メチル化酵素欠損線虫の寿命延長のメカニズムを調べたところ、生殖細胞のH3K4me3 メチル化酵素が脂質の増加と寿命延長に重要であり、腸の一価不飽和脂肪酸(MUFA)合成酵素量を増加させ、腸のMUFA量が増加すること、転写因子SBP-1を介したdelta-9-desaturaseを増加させることがそのメカニズムであり、食餌性にMUFAを与えても寿命延長が認められることなどが明らかになった。MUFAはオリーブオイルに多い脂肪酸であるので、健康に良いよというメッセージかな。
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2017年5 月10日 (水)
ApoE(特に、ApoE4)はアミロイドベータの産生を促進する
Cellの1月号から。Teramonのプレゼン。アルツハイマー病発症に関わる全ゲノム関連解析から同定された発症リスク因子としてのApoEに関する論文。ApoEはLDLやVLDLなどのリポ蛋白質を構成する主要なアポリポ蛋白質の一つ。脳におけるApoEは神経発生や生存に関わることが知られている。ApoEのアイソフォームの中で、ApoE4が危険因子として知られていたが、その詳細なメカニズムは知られていなかった。この論文において、ApoEは、DLK→MKK7→ERK1/2の活性化→c-Fosの活性化を通してAPP発現量を増加し、神経細胞からのアミロイドベータの産生を促進するということ、アイソフォームの中でApoE4が最も活性が高いことが明らかにされた。CRSPRiをプロモーター解析に、かつ、in vivoで活用した初めての例かもしれないという。
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