Mol.Cellの11月号から。Teramonのプレゼン。TGF-βはがん抑制に関わるという報告がある一方、がんの後期では悪性化にも関わるという。このガンの悪性化に関与するメカニズムは未解明なところが多い。本論文では、TGF-βの下流分子のひとつであるSMAD3の活性制御にさらなるリン酸化修飾が重要であることを明らかにしている。SMAD3のリン酸化体と結合するスプライシング因子PCBP1が見いだされている。PCBP1は選択的スプライシング(特定のエキソンを引き抜くスプライシング)に関与し、EGFなどとTGF-βによりダブルでリン酸化されたSMADが核内に移行し、相互作用することにより、がん幹細胞マーカーでもあるCD44がスプライシングアイソフォームにし、ガンを悪化させることを明らかにしている。網羅的な解析により、TGF-βは、384カ所、287遺伝子のスプラシングを誘導させ、これらの287遺伝子はがんの悪性化に関わるものが多かったという。がん細胞においては、EGFあるいはオンコジーンにより活性化されるリン酸化酵素(Akt、MAPKなど)は、SMAD3(TGF-βとは別のリン酸化部位)とPCBP1をリン酸化し、今回のTGF-βによるSMAD3のさらなるリン酸化が、がんの悪性化に関与しているという。
2016年12 月15日 (木)
2016年12 月13日 (火)
RNA-DNAハイブリッドとDNAの二本鎖切断修復
Cell 11月号から。Yurippeのプレゼン。真核生物のDNAは絶えず、紫外線等に曝され、損傷を受け、この感知、修復機構が破綻するとがんや加齢性の疾患を誘導するという。DNAの2本鎖切断(DSB)によるDNAの修復機構には2つの経路が存在している。一つは、非相同末端結合経路(迅速に修復するがエラーが起きやすい)、もうひとつは、相同組換え経路(早くは無いが正確な修復、姉妹染色体と組換え)である。近年、後者の相同組換え経路において、non-coding RNAの関与が示唆されていた。DSB後にRNA-DNAハイブリッドが一時的に形成されることも知られていた。このRNA-DNAハイブリッドは転写、複製を阻害し、生体にとって有害であり、それを軽減する酵素としてRNase Hが注目されてきた。さらに、RNase H2に変異が入ると、神経炎症疾患 Aicardi-Goutieres症候群を発症することも知られていた。しかし、DNA修復プロセスにRNA-DNAハイブリッドがどのように関与しているか不明であった。この論文では、分裂酵母を用いて、生存にRNA-DNAハイブリッドが重要であること、切断サイト周辺で形成されたRNA-DNAハイブリッドがRNase Hによって分解されるというステップが、相同組換え経路を介したDSB修復に重要であることを明らかにした。
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2016年12 月10日 (土)
ASCB2016
12月2日に米子に行き、臨床薬理学会のシンポジウムで発表し、3日に米子から羽田に飛び、サンフランシスコに向かった。恒例のASCB参加である。今年は、大学院生2名と学部3年生3名と共に参加した。UCSFで頑張っているShingoとChosanにはお世話になったためか、今年は、例年のようではなく、ほとんどトラブルのない、かつ、天候に恵まれた旅となった。ただ、土曜日に時間を見つけて訪ねた、アルカトラズ島の帰りに乗ろうとしたケーブルカーが故障し、真っ暗な中、皆で、フィッシャーマンズワーフからダウンタウンまでのアップダウンの道のりを汗だくで歩いたのは良い思い出になったと思う。ASCBの最終日は、私だけ、アトランタの共同研究先に移動し、一日中、打ち合わせをし、その次の日には、アトランタを発ち、シカゴ経由で成田へ、そして、羽田に移動し、熊本に帰ったのは体力的に少し辛かった。
土曜日であったため、多くの鮮やかなヨットが。
シーライオンの数が少なかった。
遅くなり、この後、ケーブルカーも乗れず。。
学会会場周辺の開発が年々凄まじい勢いで。。
このような就職支援イベントも盛んなのがアメリカの学会の特徴
このようなユニークな就職支援の冊子も沢山。。
ジョージア州立大学のBiomedical Science研究所の発展が凄まじい。次々に新しいビルディングの建築と優秀な研究者を雇用している。
その中心が所長であり、長年の共同研究者であるJian-Dong。まさかここまで発展させるか、活躍するかというくらいの勢いに感銘を受けた。翌早朝、GSUラボでスタッフとして頑張っているマツケンに空港まで送ってもらい、シカゴでの乗り継ぎも問題なく、帰国。
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2016年12 月 8日 (木)
アルテミシニンに関するトピック
アルテミシニンはヨモギ属のクソニンジンに含まれる抗マラリア薬であり、昨年のノーベル医学生理学賞を受賞した中国の研究者(屠呦呦(Tu Youyou)博士)の研究成果である。一番新しい号のCellを見てほしい。このアルテミシニンが膵α細胞をβ細胞へと機能分化させるということが発表された。クソニンジンは薬用植物であるが、その効能がマラリアなどの感染症が対象であったため日本での普及はなかった。これが、I型糖尿病患者に朗報の植物となれば大変意義ある研究成果である。今後の展開が楽しみである。
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