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2016年12 月26日 (月)

補足説明:日経BPの記事に対して

補足説明:日経BPの記事に対して

色々なところから賛辞を頂く。それは、以下の記事で紹介された会議等における私の発言に対してである(会員でないと内容は見れない)

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201612/549515.html

ただ、文字制限もあるためか、私の真意がうまく伝えられていないこともあり、ここに補足することにした。

 

まずは、大変多忙にも関わらず、実務実習において後進の指導を熱心に行ない、薬剤師としての職業の魅力を伝えて頂いている先生方に対して、敬意を表し、心から感謝しています。

 

6年制薬学教育がスタートし、5年次に長期の実務実習が導入され、多くの先輩薬剤師の先生方のご協力もあり、多くは順調に推移してきた。その一方で、実習を受けた学生からの不満(実習先の違いによる不公平感)が常にあった。熱意を持って、次世代の後継者である薬剤師を育成しよう、あるいは、良いリクルートの機会にしようという、実習生のモチベーションが高まる実習環境がある一方、現場の薬剤師がかなり多忙であっても、薬局の経営者からの指示で実習生を仕方なく受け入れている、あるいは、教育を苦手とするというような薬剤師の先生方の指導を受けた学生達は、実習を受ける前は薬剤師になるつもりだったにもかかわらず、実習後、薬剤師の仕事に魅力を感じず、進路変更している現実を見てきた。一方、薬学部が全国に数多く設置されると共に、いわゆるモチベーションが低い学生が実務実習を受けることも増え、その指導が大変だという現場の不満や、実習費(国立大学にとっては、大学の授業料の半分と言う実習費)を薬局や病院に支払っても、実習の指導を通常の仕事プラスαとして直接担当した薬剤師に給与として全く加算されない(経営者側に入るのみ)という職場(指導者のモチベーションを上げることも大切)も多々あるという不満、などなど聴こえていた。

 

さまざまな問題を一気に解決することはできないことは良くわかっている。ただ、実務実習も大学教育の一部である。年間の授業料の半分以上を支払って実務実習を受けた学生が、薬剤師の仕事に失望感を持ってはならない。当然、素晴らしい実習環境も多くある。学生がモチベーション高く、実習から帰ってきた姿を見るのは大変嬉しい。そのような教育を行なって頂いた薬剤師の先生方が、2名のみと言わず、受け入れ人数をもっと増やしても良いというところもある。大学と実習施設の合意(教育の質の担保)があれば、2名にこだわらない方が、学生達にとってハッピーであるのは言うまでもない。それゆえに、上記の会議等における、「3名以上でも受け入れることができるようにしてほしい」(あるいは、原則2名でも可)という発言の真意である。この条件は、あくまでも大学と実習施設の合意(教育の質の担保)であっての話であり、無制限に、3名以上に、自由に増やしても良いという意味ではもちろんない。

 

実務実習だけはなく、大学内で行なわれる講義も同様であり、我々、大学人も改めて考えるべきことでもある。たとえば、本来、物理に関する研究をやりたいと思い、入学し、授業を受けたところ、その講師の授業が面白くなく、他の道を選んでしまう。ゆえに、特に大学における教育は、若人の人生を直に左右するから、教育者という職業の責任は重い。

 

我々が学生の頃は、実務実習は、大学教育の中には存在せず、学生達の判断で、夏休み2週間ほど、実家近くの病院等に実習(当然、無料)させてもらっている同級生もいた。一方で、その頃のほとんどの学生は、実際の体験もなく、大学を卒業して、初めて、現場を知り、現場で学び、現場で成長していた。善し悪しの議論は別にして、これは、今、思うと、いわゆる、医学部の卒後インターン制度に近似するようなものと言えるのではなかっただろうか。。

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