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2016年9 月 1日 (木)

全身性エリトマトーデスの新たな創薬戦略

全身性エリトマトーデスの新たな創薬戦略

Cell 6月号から。Tsureの紹介。全身性エリトマトーデスは、DNAやRNAが結合するタンパク質に反応する自己抗体が病態時に特徴的に見られる自己免疫疾患である。アポトーシス細胞が免疫細胞によって貪食され、DNase IIが取り込まれたDNAが分解され、DNase IIが欠損しているとDNAがSTINGというタンパク質と結合し、I型IFNの産生を促すということは知られていた。本研究では、DNase1のファミリーにひとつであるDNase1l3(家族性SLEでフレームシフト変異がある)は、DNase1のC末端に正に帯電した21個のアミノ酸で構成されるドメインを持ち、DNase1と比較して、クロマチン内のゲノムDNAの消化に長けており、DNase 1l3欠損マウスで、全身性エリトマトーデス様の症状が現れることを明らかにした。アポトーシス細胞のDNAは微小粒子に内包されており、この微小粒子にSLE患者由来の抗体の多くが結合することが知られていた。今回、DNase 1l3を処置すると自己抗体と微小粒子との結合を抑制することが明らかになった。このDNase1l3欠損マウスとSTING欠損マウスでも影響を受けないことから細胞外での反応であるという。MyD88依存性反応であるということでTLR7,9の関与も示されている。アデノウイルスによるDNase1l3の発現増加はSLEの症状を抑制したことから、リコンビナントDNase1l3を静脈内に投与することも可能であり、将来的に治療薬として使用されるようになるかもしれない。良い論文。良いプレゼン。

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