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2013年3 月25日 (月)

祝 Nature Neurosci.

祝 Nature Neurosci.

東大で、講師として頑張っているChihara博士から朗報です。Nature Neuroscienceに論文が受理とのこと。おめでとうございます。しっかりとした構想と理念で、時間をかけて、まとめあげた秀逸の研究成果です。教え子の活躍は、自分のこと以上に大変嬉しいものです。論文の内容は以下の通りです。わかりやすいアピール文をお願いしました。学生たちの励みになります。

今回の研究で明らかになったこと:

小胞体における蛋白質折りたたみ能・蛋白質品管理機構が、神経回路配線の「特異性」を制御する実例・可能性を示したこと

内容:

今回我々は、神経回路配線に必要な分子機構を明らかにする目的で、ショウジョウバエ嗅覚系神経回路の樹状突起ターゲティングを制御する変異体を探索、同定しました。ショウジョウバエ遺伝学的モザイク法を用いて変異体ホモ接合体の神経細胞を作り出すと、その神経細胞の樹状突起は、脳内の正中線-側方軸方向に投射位置を間違えるという「特異的な樹状突起ターゲティング異常」を示しました。よって、我々はその変異体をmeigo(medial glomeruliの略、日本語で、樹状突起が脳内で「迷子」になることも同時に意味する)と命名し、更に解析を進めました。meigo変異体の原因遺伝子は、小胞体に局在する糖核酸輸送体をコードする遺伝子(meigo遺伝子)で、その後の遺伝学的、生化学的解析により、①meigo欠失神経細胞では、強い小胞体ストレスが起きること、②meigo欠損は、様々な膜蛋白質量の減少を引き起こすこと、③Meigo以外の糖核酸輸送体の変異体では樹状突起ターゲティングは起きないこと(Meigoは「樹状突起ターゲティング」を制御する特殊な機能を有すること)、④meigo変異体は、樹状突起ターゲティングにおいてephrin遺伝子と特異的に遺伝学的相互作用を示すこと、⑤Ephrinは4カ所でN型糖鎖修飾を受けること、⑥Meigo量依存的に、Ephrin N型糖鎖量が変化すること、⑦Ephrin N型糖鎖修飾は、Ephrinの機能発揮に必要であること、が明らかになりました。すなわち、meigo変異神経細胞では、小胞体ストレスが起き、機能的なEphrin蛋白質量の減少が引き起こされ、その結果、「特異的な」樹状突起ターゲティング異常が起きていると考えられます。

 今回、Meigoという小胞体ストレス関連分子が、神経回路配線の特異性を制御しうることを示すことで、「小胞体ストレス」と「神経回路形成の特異性」の「意外な繋がり」が分かってきました。今後は、Meigoが関わる小胞体ストレス、蛋白質糖鎖修飾が、「どのようにして」神経回路配線の特異性を制御するのか、その分子基盤について、より詳細な分子遺伝学的解析を進めていく予定です。

 

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