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2012年12 月 7日 (金)

iPS細胞を薬剤により心筋細胞へ

iPS細胞を薬剤により心筋細胞へ

Cell Reportsの論文をChosanが紹介。山中教授のノーベル賞授賞を讃える朝ゼミになった。Cell ReportsではヒトiPS細胞を用いて心筋細胞への分化誘導を促進する薬剤をハイスループットスクリーニングした。その結果、ある化合物を見いだし、その最適化を行い、KY02111を選定した。これはWNTシグナル阻害薬であった。培養には血清やサイトカインを用いることなく、iPS細胞を用いて90%以上の純度の心筋細胞を得ることができた。この分化法の興味深いところは、分化初期である中胚葉系細胞まではWNT活性化薬、それ以降はWNT阻害薬を使うところである。この研究成果を受けて、先週公表されたEuropian Heart Journalにおいて、この方法で作製されたヒト心筋細胞のシートを用いて、抗不整脈薬の評価が可能になったという報告がなされた。山中教授のノーベル賞の価値を示すひとつの成果であり、タイミングよく公表された。最近、テレビ等で山中教授のインタビュー等があるが、いかにも難病がすぐにでも期待をもたせようとインタビュアーが持っていこうとするが、山中教授が慎重に対応し、創薬への応用を強調している。今回の一連の成果がその有用な具体例を提示した。世の中への貢献がもう明確になっていることからもノーベル賞の価値は十分ある。タイムリーな話である。分化心筋細胞を用いた臨床応用は心臓の構造から考えてもほとんど困難であることからこのような応用が有用であろう。
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