薬学部の正面玄関を飾る油絵は、元エーザイの社員であり、全国の大学薬学部の教授と密なネットワークを持つ、舘 英雄 画伯が寄贈して頂いたものです。総合研究棟の一階のロビーと二階の多目的ホール入口を飾る油絵もそうです。来週の月曜日から日曜日まで(10/8-14)、崇城大学ギャラリー(銀座通りの城側の交差点角)にて個展を開催するいうことでして、是非とも鑑賞に行くことをお勧めします。開館時間は午前11時から午後7時までです。大自然の感動を描いた心洗われる作品が多いですので大変良い気分転換になります。
2012年10 月 3日 (水)
がん放射線療法時の副作用をラパマイシンが抑制する!?
頭頸部癌の治療において放射線治療が一般的であるが、副作用として粘膜炎症が起こることが問題であるという。1965年、イースター島の土壌最近から発見されたマクロライド系薬剤である、ラパマイシンは放射線療法との併用により抗ガン作用の相乗効果が期待できるという報告があったが、今回の論文は、頭頸部癌細胞株において、抗ガン作用の相乗効果は認められなかったが、放射線による正常上皮細胞の老化を抑制することが明らかになった。放射線は正常細胞において、p53の活性化によるアポトーシス、ROSの発生を介したp16の活性化による細胞老化(SASPの増加による慢性炎症)、さらには、mTORの活性化によるMnSODのタンパク質発現量の低下(その結果、ROSがさらに増える)などにより、粘膜炎症が引き起こされるという。ラパマイシンは、mTORを抑制することにより、MnSOD量が増加し、ROS量が激減し、上記の正常細胞で見られる慢性炎症が抑制されるという。免疫能の低下という可能性が気になるが、放射線が当てやすい頭頸部癌だから骨髄への影響を考えなくても良いのかもしれない。アン先生からの指摘で、がん幹細胞の保護になってしまう可能性もあるのではという点も考慮すべきかも。今回のラパマイシンの投与量は低く、実際の臨床を考えた場合、放射線の照射時に影響する部位の粘膜に局所投与することで、さまざまな副作用を問題視すること無く、粘膜炎症を抑制できるかもしれない。今後、実際の現場でどう活用されるかが楽しみな研究成果である。Cellの姉妹紙のCell Stem Cellの9月号からの論文。Kameのプレゼン。昨日のMachyのプレゼンといい、学部4年生だが、しっかりとした成長を感じる。将来が楽しみである。
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2012年10 月 2日 (火)
新たな癌制御機構
Cell, 7月号の論文からMachyが紹介。E3-ligase complexの構成成分であるSkp2という癌原遺伝子があり、多くのガン抑制遺伝子の分解を担っている。Skp2はIP3-Akt pathwayによりリン酸化され、細胞質局在を示すことはわかっていたが、マウスのSkp2のリン酸化部位は保存されていないことからSkp2の新たな制御機構が存在することが考えられていた。この論文では、Skp2がp300によりアセチル化され、細胞質に移行させることによって、Skp2の核内分解を防ぐこと、アセチル化されたSkp2はミトコンドリア内のSirt3により脱アセチル化され、核に移行し、Cdh1による分解を受けること、細胞質内に局在するアセチル化Skp2はcasein kinase 1 依存的に、E-cadherinを分解し、細胞遊走能を高め、癌を悪性化していることなどが明らかにされた。また、ヒト乳癌患者由来の組織において、Skp2とE-cadherinの発現量に逆相関があることも示されていた。リン酸化部位とアセチル化部位が近傍にあり、マウス以外のほ乳類では、互いに競合する可能性はあるが、リン酸化を抑制する薬をやってもアセチル化が起こると癌が悪性化することが予想される。癌は単純には抑制できないことを示しているようでもある。この分子群を創薬ターゲットにするのは難しいのだろうか。マウスの自然発症がんモデルを用いた薬効評価は誤った結果が得られる可能性も示唆しているのだろうか。
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