PAGE TOP

2011年10 月18日 (火)

膵臓の糖転移酵素が糖尿病発症に影響する

膵臓の糖転移酵素が糖尿病発症に影響する

Nature Med.9月号から、Matsu-shinが紹介。高脂肪食により、血液中の遊離脂肪酸が増える。遊離脂肪酸が膵臓のβ細胞に酸化ストレスを与える。その結果、転写因子であるFOXA2とHNF1aの発現量低下、あるいは核外移行がおこる。すると、そのターゲット遺伝子であるGLUT2と糖転移酵素 (N-acetylglucosaminyl transferase: GnT-4a)の発現が低下する。GnT-4aはゴルジ体において、GLUT2にN型糖鎖修飾を行なう。糖鎖修飾されたGLUT2は細胞膜上に運ばれ、膜に存在するGalectin9と結合し、細胞膜に安定的に存在するようになる結果、β細胞において、血液中のグルコースを効率よく取り込み、インスリンの産生を促すという。膵臓β細胞特異的にGnT-4aを高発現させたマウスに高脂肪食を与えても糖尿病への進展は抑えられ,一方、GLUT2の高発現マウスでは硬化が極めて弱いことから、GnT-4aが重要であるという。これらのメカニズムは糖尿病患者のβ細胞でも重要であることを示しており、大変面白い知見である。結局は、酸化ストレスを抑える薬で良いのかということも言えるが、抗酸化薬の臨床試験は、私が調べた限り、明確な結論は出ておらず芳しくない。創薬にどう活かせるか。

ご意見メール
clear_both