Nature 2011年 3月号に掲載された論文をJyurianが紹介した。今まで、ニコチン受容体のα5サブユニットの遺伝子変異がタバコによる疾患リスク(肺がん、COPD)を高めること、また、ニコチン依存症を起こしやすいことが知られていた。今回の論文では、ニコチン受容体のα5サブユニットのノックアウトマウスが少量のニコチンでは満足できず、とめどもなく高用量のニコチンを求めるようになることを明らかにした。ニコチン受容体のα5サブユニットが手綱核ー脚間核経路に発現していることからノックアウトマウスにおいてこの部位選択的に発現を補うとニコチン中毒が正常に戻るという。この遺伝子に変異(SNPS)があるとnon-smokerでも肺がんリスクが高いという報告もある。ニコチンが肺がん細胞の増殖を促す報告もある。若いうちにニコチン依存になるヒトは、覚せい剤にも手を出しやすいという記事もあった。ニコチン受容体のα5サブユニットの遺伝子変異の有無に関わらず、吸わない方が良い.
2011年5 月12日 (木)
2011年5 月11日 (水)
偽プロテアーゼの役割
Cell 4月号から、タンパク質の細胞内運命を決定する新たな分子を提起した論文をShoチャンが紹介した.Rhomboidという、ゴルジ体膜に存在するプロテアーゼは、代表的な成長因子であるEGFの前駆体に作用し、EGFを遊離させ、細胞外に分泌させる。Rhomboidが有するプロテアーゼ活性を持たず、新たにIRHDというドメインを有するiRhomという分子が種を超えて存在し、pseudoprotease (偽プロテアーゼ)と言われていたが、その機能は不明であった.今回、明らかになったことは、iRhomが小胞体膜に存在し、EGF前駆体を小胞体関連分解 (ERAD)に向かわせ、結果的にEGFを減少させる。発生の過程で、iRhomの発現が変化するらしく、Rhomboidの作用に影響するという。iRhomの役割は、小胞体における滞留時間を延長させているだけかもしれない。EGF前駆体以外の基質についてもどうなのか興味がある.同グループがヒトガン細胞でRhomboidの発現が高いという報告をEMBO Rep (2011)にしている。結果としてガン細胞からのEGFの産生が高くなると考えるとガン治療薬のターゲットになりうるのでは。Rhomboidの活性阻害薬のスクリーニングの論文もこの4月に報告されている。創薬という観点からもホットな領域になっていくだろう。
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2011年5 月10日 (火)
Type 1 インターフェロンの抗炎症メカニズム
Type 1インターフェロンはB型肝炎やC型肝炎の治療に用いられている。Onuki君がプレゼンしたのは、Type 1 インターフェロンを抗ウイルスの目的だけでなく、多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療に使われているが、その抗炎症作用のメカニズムはよくわかっていなかったという論文(Immunity, 2011年2月号)。Type 1 インターフェロンを投与すると、pro-IL-1の産生抑制だけでなく、caspase-1の活性化抑制し、IL-1の産生が抑制されるという。Type 1インターフェロンは、STAT1を活性化し、inflammasomeの阻害によるCaspase-1の抑制とIL-10の産生を促し、IL-10はオートクリン的に働き、STAT3を活性化し、pro-IL-1の産生を抑制するという。詳細なメカニズムはまだわかっていないが、Type 1 インターフェロンの抗炎症作用のメカニズムを明らかにでき、かつ、インフルエンザウイルスなどのウイルス感染後に見られる免疫低下による細菌感染(肺炎誘発)のメカニズムの説明にもなっており、興味深い報告である。
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細胞膜上のカベオラの役割
Okaちゃんが紹介した論文は、細胞膜に存在するカベオラ構造の新たな役割を明らかにしたものであった。細胞に進展刺激等の機械的なストレスを与えると、くぼみ構造であるカベオラ構造が消失し、細胞膜の過度な進展を抑制しているという。つまり、カベオラが細胞膜の柔軟性を担保しているという。カベオラが少ない筋ジストロフィー患者の筋管細胞は、機械的な刺激に脆弱になっているというデータもあり、単純な話ではあるが、この臨床的な意味は大きい。
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