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2011年4 月20日 (水)

血管内皮細胞のNO産生とインスリン抵抗性との関係

血管内皮細胞のNO産生とインスリン抵抗性との関係

Cell Metabolismの2011年3月号から。M2のMikity.

血管内皮細胞におけるインスリンシグナルの低下が骨格筋におけるインスリンの糖取り込み作用の減弱につながる。そのメカニズムは以下の通り。健常者は、食後に増加した血液中のインスリンが血管内皮細胞のインスリン受容体に作用し、IRS2-Aktを介して、eNOSを活性化し、血管内皮細胞からのNO産生が増える。その結果、毛細血管の透過性が増加し、骨格筋細胞に血液中のインスリンが移行しやすくなる。一方、糖尿病状態では、血管内のIRS2発現が低下しており、上記の現象が起こらず、骨格筋におけるインスリンによる糖取り込みが起こりにくくなる。正常動物を用いて血管内皮細胞特異的にIRS2をノックアウトすると、骨格筋において糖取り込みが抑制されていた。また、糖尿病状態の動物に、プロスタサイクリン誘導体を投与して、血管内皮細胞におけるNO発現を異なるメカニズムで増加させると、骨格筋におけるインスリンによる糖取り込みが改善したという。ただ、単純に骨格筋へのインスリン移行を促進しても、骨格筋におけるインスリンシグナルが炎症性サイトカインによって低下していたら効果は期待できないのではと思ったが、やはりプロスタサイクリン誘導体の臨床試験結果は?らしい。タイトルがあくまでも「Impaired insulin signaling in endothelial cells reduces insulin-induced glucose uptake by skeletal muscle」となっており、全身症状改善とまでは言っていない。単純な血管拡張であれば、血液中の炎症性サイトカイン等の移行も促進され、骨格筋細胞におけるインスリンの作用も抑制され得るのもその理由か。ただ、温熱療法で骨格筋近傍の毛細血管を拡張するとともに、骨格筋のHsp72発現を上げることで、骨格筋細胞におけるインスリン抵抗性を改善することで有効性を示し、さらに、最適化された微弱電流の効果により、インスリンシグナルをさらに増強できるため、温熱と最適化された微弱電流の併用(バイオメトロノーム、Bio Metronome)が、メタボや2型糖尿病患者に対してかなり有効であることのメカニズムのひとつとして考えてよいだろう。さらには、最適化された微弱電流には、血液中の炎症性サイトカインを抑制する作用もあることも全身症状の改善に大きく貢献しているのだろう。かなりわかってきた。

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