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2010年4 月27日 (火)

新しい遺伝子発現パラダイム(転写ファクトリー)

新しい遺伝子発現パラダイム(転写ファクトリー)

 Nature Geneticsの1月号の論文をfukuda君(M1)が紹介をしてくれた。大変エキサイティングな論文であり,かつ、Fukuda君もこのレベルの内容をパーフェクトに理解し、ポイントを押さえたプレゼンができていた。この論文のすごさは、アブストラクトの最後の1文に集約されていると思う。「Our results establish a new gene expression paradigm, implying that active co-regulated genes and their regulatory factors cooperate to create specialized nuclear hot spots optimized for efficient and coordinated transcriptional control.」教科書に新たに掲載されるレベルの話。赤血球の分化成熟過程において、活性化されるヘモグロビン遺伝子発現には、特異的な転写ファクトリー(工場)が必要である,Keyとなる転写因子KIf1を工場長として、様々な染色体に存在するKlf1標的遺伝子群も工場内で転写制御するという。この工場には、活性化状態である高リン酸化RNAポリメラーゼ IIという高性能の最新鋭マシーンが豊富に存在し、製品(遺伝子)が効率よく製造されるという。この論文では、e4Cという新たな方法も駆使され,転写制御に関わる研究では今後要求されるデータになるのかもしれない。この論文に敢えて注文をつけるとすると、転写ファクトリーが形成されていく過程を理解するための時間軸を考慮したデータがあれば、なお良いという点である。

 朝ゼミで、自分の研究内容に近い論文を紹介することも良いが,紹介するのも難しい、今回のような論文は、自らの引き出しを飛躍的に増やし、大きな成長に繋がることから、大いにチャレンジしていってほしいと思う。

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